アンコール遺跡と子供/アジアコラム

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アンコール遺跡と子供

アンコール遺跡と子供

 僕は自転車で遺跡を周る間にたくさんの子供達と会いました。行く先々で子供達10数人が僕を取り囲みます。そして僕に日本語で「1ドルください」言ってきます。これはとても辛い体験でした。子供達はおそらく毎日、毎日こうやって観光客を取り囲みお金をもらって生活をしているのです。

 彼らがお金を求めている事は十分に理解しているつもりです。しかし、一人に1ドルをあげてしまうと、連鎖的に他の子供達にもあげなくてはいけません。旅の資金を多く持っていない僕は、彼らに英語で「旅をするためのお金だから、余分にお金を持っていないんだよ」と言いました。すると子供達が英語でいっせいに言い返してきました。「カンボジアまで来ることが出来るのに、お金が無いはずが無いだろう!!」これは、本当に心が痛かったです。言い返す言葉も見当たらずに僕はその場を後にしました。

 僕は知っていました。彼らは英語が話せると言っても、まだ3歳から10歳くらいです。毎日観光客相手に少しづつ英語を学習しているとはいえ、ほとんど英語を理解していないのが実態です。そんな幼い彼らが、どうしたらこんなに「トンチの効いた切り返し」をする事ができたのでしょうか?

 答えは簡単でした。多くの観光客が僕と同じような回答をするから、それに対する切り替えしのみを覚えて僕に言ってきたのです。

 それを証拠に他の場所で僕が「お金があまり無い」と答えると、一言一句違わぬ回答が返ってきました。それに、他の英語はあまり理解ができないようで、分からない時は日本語で「1ドルください」と連呼しました。

 僕は問題はこの先にあると考えています。それは、「この切り返しや日本語を子供に教えた人が存在している」と言う事実です。観光客か親か、いずれにせよ大人が子供に教えたのでしょう。日本語に至っては日本人以外に考えられません。

 僕はこう推測しています。優しさの仮面を被った大人が、「観光客にこう言えばお金をもらえるよ」と、子供に良かれと思って教えたのでしょう。しかし、そこには重大な見落としがあると思います。それは、教えた人達は今も子供が働いている現状を応援しているだけで、実際は高みの見物です。教えた人が「良い事をした」と言う優越感に浸れるだけです。根本解決には向かっていないのでは無いでしょうか?

 特に僕は日本人であるために、日本語を教えた人に苛立ちます。子供に日本語を教えるならば、他にもっと教えるべき美しい言葉が日本語にはたくさん存在しているのでは無いでしょうか?

 そんな中僕は見てしまいました。10数名の日本人男性のグループが、子供を指差し日本語で彼の友人達に「こいつ日本語で1ドルくださいって言ってる」と、笑いながら話している姿を・・・。そんな人達が日本人のイメージを他の国々で作っているのです。