国籍の無い人々
タイには僕の行きつけのレストランがたくさん有ります。
その中の1つについてのお話をしたいと思います。
僕がその行きつけのレストランを見つけるきっかけになったのは、
お腹が空いてフラフラしながら町を歩いていた時に、
最初に見つけたレストランに何も考えずに入っていた事がはじまりでした。
そこは、二人の女性が経営している小さなレストランなのですが、
一人で地図を開いてメモを書きながら忙しい様子で食事をとる僕に
彼女達は興味があったのか、色々と話しかけられる間にとても仲良くなったのです。
特にOさんとは毎日1時間は話すようになりました。
最初に僕がこのレストランを訪れた時は2人で店を切り盛りしていたんですが、
しばらくした後に僕が訪れた時は、どうやら3人で店の仕事をしているようでした。
若い女の子が働いている事に気が付いた僕は、
「店が忙しいから従業員を増やしたの?」
と聞いてみました。
するとOさんが僕に小声で
「彼女は不法労働者だから・・・」
と難しい表情をしながら僕に答えました。
話によると新しい従業員の女の子は15歳で、
元々はOさんがレストランを開く前に働いていたホテルの従業員友達だったそうです。
女の子はミャンマー出身で、
13歳の時に家庭の貧困事情から一人で生活しないといけなくなり、
タイへと不法入国をして隠れて働いていたそうです。
その後、Oさんがレストランを開いて軌道に乗ったので、
女の子が将来風俗関係の仕事につく事を恐れて仕事に誘ったそうです。
このように生活苦のためにミャンマーや農村から町に出てきて、
最終的に体を売る事になる少女達は今もアジアにはとても多くいます。
そして、その内の多くは若くして病気にかかり亡くなってしまいます。
また、彼女らが外国人相手に生んだ子供達はタイで生まれたにも関わらず、
無国籍になってしまいます。
国籍を持たないと言う事は、「国は彼らを守ろうとしない」と言う事です。
もちろんパスポートを取得する事もできません。
Oさんは最後にこう言いました。
「私が彼女を雇っていると言う事が世間に広まると、彼女は強制送還になり
私は刑務所に行く事になるかも知れないね。でもね・・・、ほっとけないじゃない。」
女の子がOさんと楽しく話している笑顔を心のカメラで写し撮り、
「法律を守る事だけでは人を守る事ができない時もある」
と言う悲しい事実を何度も頭で噛み締めました。
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