虹の原石/アジアコラム

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虹の原石

今日は、カンボジアで出会った「虹の原石」のお話です。

カンボジア

 僕がカンボジアでアンコールワットに心を奪われていた頃、一人の日本人男性と出会いました。彼の名前をNさんと呼ばせて頂きます。

 Nさんは、日本で3年間服の染色工場で働いていたそうです。そんなある日、Nさんの心を「アジアの旅」へと突き動かす一冊の本に出会ったそうです。

 その本は「森本喜久男」さんと言う方によって書かれている本でした。

ストーリーは、

 {「森本喜久男」さんが、旅の途中でカンボジアの国立博物館に展示されている「一枚の布」に出会って、美しい染色の伝統技術に心を奪われます。

 そして、「その技を学びたい」と思うようになるのですが、ポルポトなどによる多くの戦火を潜ったカンボジアでは、その伝統技術はすでに失われている事を知ります。そこで、「森本喜久男」さんは、カンボジアで困難を乗り越えその伝統技術を復活させる。}

と言う話だそうです。

 そして、その本に魅了されたNさんは東南アジア諸国の染物工場を訪ね歩く事を決めたんだそうです。しかし、工場に行ってみてもNさんは英語が全くできません。全て現地の人との会話は筆談やジェスチャーのみで行い、1つ1つ丁寧にメモをとっているようでした。そして、分厚いノートに整理綺麗に整理されていました。

 そんなある日、二人で町に出かけた僕はNさんが立ち止まり一本の木をじっと眺めている事に気が付きました。

 不思議に思い、「何を見ていんですか?」と僕は聞いてみました。

 するとNさんは、「あの木の枝のような茶色を見たことがない・・・」と答えました。

 僕は何気ない彼の回答に圧倒されました。それは、僕は時々空を見たり海を見たり山を見たりと、綺麗な景色を見て「綺麗な色だ」と思う事があります。しかし、Nさんの目には、「何気ない全てまでが”色”に溢れているんだ」という事に気が付いたからでした。

 僕が見ている色の何百倍、何千倍を見ている世界。それを考えた時、僕が見ている世界が白黒の写真の様に思えてなりませんでした。

 僕はそんなNさんに1つお願いをしました。

「僕の服を染めてくれませんか?」

 Nさんは、恥ずかしいそうに笑いながら、

「今の僕は納得して染める技術がないから、将来gogowaywayの服を絶対染めてあげるね」

 いつか世界を色鮮やかに染める「虹の原石」に僕は出会いました。