旅の出会い
一人旅は、時には孤独なものでした。一日全く「心を許した話をできない」と言うのは、一人旅なので仕方の無い事ですが、一人旅は時にすばらしい出会いを僕にくれました。
Sさんと言うのですが、僕とSさんとはラオスで出会いました。長い船旅の時に知り合いました。
僕はSさんと、しばらく話していて分かりました。Sさんには「何か人に言えない様な過去がある」と言う事を。
Sさんは、元々喧嘩を商売にしている人でした。止めてからしばらく経つそうですが、今でも強い心を持っています。今はアジアを周って、たくさん経験して、写真家になる夢を追いかけています。
僕の旅の兄貴だと言えます。二人でたくさん話しました。たくさん笑いました。
しかし、どんなに仲良くなっても、Sさんは過去をあまり語りたがりません。それは、両親を泣かし続け、多くの人を傷つけて、数々の事をしてきたからでした。
お酒も入り、少し過去を語ったSさんの目は、とても寂しそうでした。
Sさんは僕に言いました。
「背中の絵を消すか、旅に出るか迷ったんだよね。でも旅に出ちゃったな。」
たぶん、分からない人には分からない言葉なんだと思います。軽い言葉だと取れると思います。
しかし、僕は知っています。Sさんはもう少し過去を背負って生きようと思っているんです。
一生かけても償えないかも知れない罪を犯した人は、一生かけても心に傷が残っているのかも知れません。
僕は、Sさんの優しい笑顔の奥にある、悲しい目を知っています。
Sさんはどんな時も、過去をしょっているんだと思います。
Sさんの罪の意識が消える日は、たぶん一生無いでしょう。でも僕はSさんが例えどんな人になっても、一生友達です。
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