アジア旅行と旅人
アジア旅行の最中には多くの旅人との出会いが醍醐味です。
僕がラオスを旅している時、Sさんと言う人と仲良くなりました。
彼は様々な過去を乗り越えて前へと進もうとしているカメラマンの卵なんですが
、
僕は彼と時間を共にしていく内に、彼の持った魅力に吸い寄せられるように心を
開くようになっていきました。
普通、旅の出会いのほとんどは一期一会で、二人が別々の旅の目的を持つ以上
別れはやってきます。
僕はラオスからタイに入り南下してカンボジアに入るルートを選び、
Sさんは、ラオスを東に横断していきベトナムを南下するルートを選んだのでした
。
二人でいたアジアの旅の時間は短い間でしたが、
二人の心の中には大きな「友情」というものが芽生えていました。
別れ際にSさんが僕に「写真を一枚撮らせてくれない?」と言ってきました。
それを快く承諾した僕は「これが二人の別れで、日本でも離れた家を持ち海外
にいる事が多い僕達が、
再び出会う事はもう無いかも知れない。」
そんな思いを胸にSさんと悲しい顔はせずに笑顔で別れを告げました。
僕はSさんが僕と同じ思いをしていた事を知っていました。
だから、別れ際に僕の写真を撮ったのです。
その後、タイ・カンボジアを抜けベトナムの地に降り立った僕は、
たまたまバスで一緒になったフィリピン人の男性達とご飯を食べる約束をしてい
て、
一緒に町を歩いていました。
その時僕は、突然後ろから何者かに羽交い絞めにされました。
「恐喝や物取りの仕業に違いない」と思い、
無理やり振り返って相手を睨み付けようとした僕は、目を疑いました。
なんとそこにSさんが立っていたのです。
旅人同士の出会いは一期一会、
一つの場所に留まる期間も、
何処に行くのかも人はおろか自分さえも分からない旅の世界。
そんな世界で僕は、ラオスの地で出会ったSさんと、1000キロ近く離れたベトナム
の地で再び出会ったのです。
タイを南下して東に進んでベトナムに入った僕と、
ラオスを東に進んでベトナムに入り南下してきたSさん。
僕達は、ただ再会を喜ぶばかりで言葉にできない思いがただ込み上げてきて、
体の震えが止まりませんでした。
その後、ベトナムでしばらく一緒に過ごした僕達には再び別れがきました。
その時Sさんは僕に「写真を撮らせてくれ」と言いませんでした。
もう二人は知っていたからです。この出会いがこれから二人が何度も出会う「
ただの2回目」と言う事を。
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